今回は、1.患者さんの家族としてのお立場からみたCOPD、
2.呼吸器専門医として皆さんに知って欲しいCOPD、
3.患者会という立場から皆さんに伝えたいCOPD
という3つの視点で3名の方にお話しいただきました。
このインタビューの内容がすべてのCOPD患者さんに
あてはまるものではありません。
また、患者さんによって適切な治療が異なるため、
必ず医師に相談するようにしましょう。
「COPDの早期治療に取り組むことで、息切れを改善するだけではなく、毎日の生活の質も改善できることを知ってほしいと思います」
COPDのキーワードは3つです。1つ目は長い間吸い続けてきたタバコ、2つ目は息切れ、3つ目が咳と痰です。COPDの厄介なところは、症状が加齢に隠れて出てくるということです。COPDの症状が現れても、年のせいじゃないか?とまず思ってしまうことが一番の問題だと思います。長い間、タバコを吸っていた方で、次のような状態が気になっている場合は、すぐに医療機関を受診して検査を受けて欲しいと思います。
息切れは、加齢で体力が落ちたから仕方ないと考えがちますが、実は歳を取るだけでは起きません。平坦な道を歩いている時にはそんなに息切れってしないものです。ですから、同じ年齢の人と並んで歩けない、息切れがして自分だけ遅れてしまうというのは、COPDに気づく重要なサインです。また、痰を伴う咳、咳をすると痰が出るというのもCOPDの典型的な症状です。
COPDの治療では、禁煙は欠かすことができません。ただ、これまで何十年もタバコを吸い続けてきた患者さんが、ご自身の決意だけで禁煙することはとても大変なことだと思います。病院できちんと診断を受けて、担当の医師と一緒に禁煙に早く取り組めるというのは大きなメリットだと言えます。タバコを吸っていると加齢による肺機能の衰えよりも速いスピードで肺の機能が低下していきますが、禁煙をすることで、この肺機能の低下の進行を加齢による低下と同じぐらいにすることができるため、軽症、中等症、重症、どの段階であっても、COPDの患者さんにとってタバコをやめることは必要なことです。
この他にも薬による治療を早く始められるという点も意義があると思います。昔は、お薬の作用時間が短く、1日のうちで何回も薬を吸入しなければならず、患者さんの負担が大きかったのですが、今は薬も随分と進化して多くのCOPD治療薬が1日に1回で良くなりました。
また症状に合わせて色々なお薬を組み合わせられるようになり、選択肢も増えています。そのため、COPDをきちんと治療をして、息切れが軽くなると、今までのように歩けるようになって、外へ出かけるようになります。治療には息苦しさをとるだけでなく、生活の質も改善させることが期待できるのです。
COPDの治療は、今までお話ししてきた、禁煙、薬、そして呼吸リハビリテーションの3つを並行して行います。リハビリテーションというのは、病気で失われた機能を取り戻すために、今ある力(機能)を最大限に使って、人間らしい豊かな暮らしができるようにすることを目的としています。COPDのリハビリテーションには腹式呼吸や口すぼめ呼吸など、いろいろありますが、なによりも“足”の力を鍛えて、患者さんが少しずつ息苦しくなく動けるようになることを目指していきます。「なぜ、呼吸なのに、“足”の力を鍛えるのか?」というと、COPDになると患者さんは歩かなくなって太ももの筋肉が落ちてしまっており、これによって息切れが強くなっているためです。肺の細胞はタバコによって壊れてしまっているため、修復することはできないですが、少し負荷をかけ、多少息が切れても歩いて足の筋肉を鍛えるリハビリテーションに取り組むことで、動く時の息切れが楽になります。
そして、このために欠かせないのが万歩計です。今、一体、1日にどのくらい歩いているのかを知ることができますし、今日は2000歩、明日は2500歩と目標を決めて取り組むことができます。杖やシルバーカーを使ってもいいので、転ばないように気を付けながら、自分のペースで歩いてみるようにしましょう。
歩くときは呼吸法も大切になります。ポイントは、ゆっくり吐くことです。例えば、1、2と2秒で息を吸ったら、その倍の4秒かけて、3、4、5、6とゆっくり吐きます。このような呼吸法についても、病院に行くとじっくり教えてくれると思います。