Interview COPD治療を早く始めることの大切さについて、医師と理学療法士さんにお伺いしました。医師: 霧ヶ丘つだ病院
理事長 津田 徹先生(写真左)
理学療法士: 霧ヶ丘つだ病院
呼吸リハビリテーション科 松尾 聡先生(写真右)

注:この医師および理学療法士のお話がすべてのCOPD患者さんにあてはまるものではありません。
また、患者さんによって適切な治療が異なるため、
必ず医師に相談するようにしましょう。

50代の患者さんのCOPD治療は、どのようなことが大切になると
思いますか?

津田先生:50代でCOPDを発症した場合、その後定年まで5年以上もあり、また、COPD患者さんの平均寿命は80歳程度と、一般の男性と変わらないため、寿命まではおおよそ30年もあります。先が長いので、患者さんの呼吸機能が「今、どんな状態なのか」と、「この先は、どんな状態になっていくのか」についてきちんと理解してもらうことが大切だと考えています。この50代の患者さんに、今後の呼吸機能の予測図を見せた時には、「定年までは仕事をしていたいと思っていたのに、先生、私の肺は将来的にほとんど機能ゼロになる下降線を示しているじゃないですか・・・」と愕然とされていました。ただ、ショックを与えることがグラフを見せる目的ではないため、同時に、「禁煙して治療をすれば、タバコを吸っていない人と同じ傾きまで呼吸機能を戻せます」と治療の意義についてもお話ししました。また、COPDと診断される年齢が早くなると、それだけ病気と付き合う期間も長くなるため、単に薬を吸入するだけではなく、病気についてしっかりと勉強して、少しでも良い状態を維持できるようにセルフマネジメント、つまりは病気に対する自己管理ができ、患者さんご自身の行動を変えていく行動変容が重要になってきます。この50代の患者さんにも禁煙、吸入薬、呼吸リハビリテーション、そして食生活の改善という4つの重要性を説明して、治療に取り組んでもらいました。働き盛りの年代でCOPDを発症された患者さんは「仕事をしたい」という目標が明確なためか、ご自身でもしっかり調べて、「呼吸リハビリテーションによって筋肉を鍛えたり、呼吸の仕方を身につけたりすることで、壊れた肺の機能を補えること」、「呼吸リハビリテーションで筋力トレーニングをした後、しっかりとタンパク質の多い食事を摂ることで筋肉量を増やせること」など、病気についての理解をどんどん深めている姿勢には驚かされました。

COPDの治療を始めて、患者さ
んの生活にはどのような
変化
がありましたか?

津田先生:この患者さんの場合、治療を始めるまでは、「歩く」ただそれだけのことがものすごく辛かったようですが、今では、「スーパーやデパートでも普通に歩けるようになって嬉しい」とおっしゃっていました。それと、この患者さんは階段で息切れを起こしたため、階段恐怖症のような状態で、どこでも必ずエレベーターを使っていたのですが、呼吸リハビリテーションのプログラムに取り組み、今では2階、3階へと階段も上れるようになっています。患者さんもご自身の変化について、「筋力トレーニングをして足腰が強くなったから、階段も上れるようになった」と実感されていました。肺の中のことは目では見えないため、ちょっと苦しくても“年のせい”、楽になっても“調子がいいから”と感覚で片付けてしまいがちになるため、呼吸機能など身体的な変化について数値やグラフで「見える化」して、患者さんと共有しています。この患者さんも数値を見た時に、「呼吸機能の検査結果が良い方向に振れると、自分のやる気も一緒に大きく振れていくような感じがする」と、お話ししてくれました。また、患者さんが会社の上司に報告した時には、「体重も増えて、呼吸の機能も上がっていて、すごいじゃないか。色々と制度もあるから、それを活用しながらしっかり働けるようになるまで頑張れ」と親身になって応援してくれたようです。

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