Interview COPD治療を早く始めることの大切さについて、医師と理学療法士さんにお伺いしました。医師: 霧ヶ丘つだ病院
理事長 津田 徹先生(写真左)
理学療法士: 霧ヶ丘つだ病院
呼吸リハビリテーション科 松尾 聡先生(写真右)

注:この医師および理学療法士のお話がすべてのCOPD患者さんにあてはまるものではありません。
また、患者さんによって適切な治療が異なるため、
必ず医師に相談するようにしましょう。

理学療法士の視点から

最初に「復職を目指しましょう」という 明確な目標を持つことは、 その後、呼吸リハビリテーションに積極的に 取り組む気持ちに繋がると思います。

 呼吸リハビリテーションを始める前には、まず、COPDの症状を改善してどんな生活を送りたいか、目標を決めるところからスタートします。患者さんの年齢が若く、お仕事をされている場合は、「仕事に復帰して、みんなと一緒に働きたい」という目標が明確に立てやすいと感じています。 呼吸リハビリテーションではじめに取り組んでいただくのは、息苦しさを軽くするための呼吸方法の指導、痰の出し方の指導、突然息ができなくなった時のパニックコントロールの指導で、COPDという病気とうまく付き合うためのコツを掴んでもらいます。このようにして息切れに対する恐怖心を軽くできれば、呼吸リハビリテーションに取り組もうという前向きな気持ちが生まれてくるため、リハビリを進めるための大切なステップだと考えています。 次に、呼吸リハビリテーションによって息苦しさを軽減して移動できる距離を伸ばしていきます。呼吸リハビリテーションでは、少しずつ負荷を上げていくのですが、治療の開始が遅れると運動の負荷自体に耐えられなくなり、リハビリを中断してしまうこともあるため、継続していくためにも呼吸機能が残っていて筋力がある、若い年齢で治療を開始することは、呼吸リハビリテーションの成果という点でもとても意義が大きいと思います。 当施設では、すべての患者さんの変化をグラフで一緒に見るようにしています。項目も、6分間歩行テストやウォーキングだけでなく、筋力や心理的な評価、生活の質、日常生活の活動量など様々な視点から評価しています。大体、リハビリの成果が見えてくるのが6~8週間1)ぐらい継続した時点になります。また、リハビリは呼吸機能の低下を抑制するため2)、患者さんの年齢が40代、50代とリハビリへの取り組みが早くなれば、その効果も大きいと考えています。 呼吸リハビリテーションの目的の一つは、患者さんの生活の質を少しでも改善することです。治療を開始して間もない頃は、咳や痰が軽くなり、夜に睡眠がとれるようになるという症状の改善による生活の質の変化がみられ、その後、ゴルフをしたり、お食事に行くなど、患者さんのやりたいことができるようになってくると、生活の質のスコアもさらに変わってくる傾向があります。しかし、呼吸リハビリテーションの開始が遅れてしまうと、この生活の質の部分の変化が表れにくくなるため、治療と同様に、呼吸リハビリテーションもできるだけ早く開始することが重要だと考えています。  現在、日本ではまだ多くの患者さんが呼吸リハビリテーションを受けられていない状態です。COPDの治療は、薬の吸入だけで生活に変化が表れるものではありません。是非、一人でも多くの患者さんに呼吸リハビリテーションにも取り組んでもらい、息苦しい毎日の生活が治療により少しでも変わることを実感してほしいと思います。 特に今回のテーマである、「働き盛りのCOPDの治療」という点では、通勤や仕事を息苦しくなく継続するためにも、COPDという病気のこと、呼吸リハビリテーションで今の息苦しさは変えていけることを、一人でも多くの患者さんに伝えられればと思います。

1)International Journal of COPD 2014:9
2)Eur Phys Rehabil Med 2014 50:419-26